お久しぶりです。フードコーディネーター・フードスタイリストのsaecoです。前回の更新からすっかり時間が経ってしまいました。
春になり旅行シーズンが到来した影響か、外国人向け料理教室の予約もだんだん増えてきています。
フードコーディネーターのお仕事も新規のお問い合わせが増え、撮影スタイリングやレシピ開発なども並行して行っています。
最近はSNSなどはもっぱら英語アカウントでの発信メインになっており、ブログも書きたいと思いつつ、つい後回しになってしまってました。。

久々のブログなのでいろいろ書きたいことはあるんですが、今日は料理教室のお客さまでも一定の割合で存在するヴィーガン・ベジタリアンについてご紹介したいと思います。

ヴィーガン・ベジタリアンが何か知っていますか

海外のヴィーガン・ベジタリアン事情

さて、欧米では当たり前のように存在しますが、日本ではあまり馴染みのないヴィーガン・ベジタリアン。
わたしは海外に引っ越す前は「ベジタリアン=野菜しか食べないストイックな人」というイメージを持っていました。
が、しかし、海外で出会ったヴィーガン・ベジタリアンの人たちは、野菜しか食べない完全菜食主義者人から、気分で今日は肉を食べてもOKとゆるくベジタリアンライフを実践している人までさまざまな人がいました。

フレキシブルなベジタリアン?分類もいろいろ

たしかに「動物性食品を食べないのがベジタリアン」という認識は間違っていませんが、ベジタリアンだからと言って野菜しか食べないわけではありません。
また、動物性食品には肉や魚だけでなく、卵、牛乳などの乳製品、はちみつ、魚出汁や練り物などの魚介類から作られた食材、牡蠣エキスが入ったお好み焼き・たこ焼きソースなども含まれます。
日本食はあらゆるところに出汁を使っているので、ベジタリアン仕様にするには肉や魚介類を抜くだけでなく、出汁も植物性にするなどの工夫が必要なんですよね。
そして、実はベジタリアンと一言で言っても、食べるものによって細かく分類されているんです。

ラクト・オボ・ベジタリアン(lacto-ovo vegetarian)

欧米に多いベジタリアンのタイプがこちら。
肉・魚介類は食べませんが、卵・乳製品はOKです。「ラクト」は乳製品、「オボ」は卵を意味します。
日本人がイメージするベジタリアンもこのタイプが多いかもしれませんね。

オボ・ベジタリアン(ovo vegetarian)

肉・魚介類・乳製品・はちみつはNG、卵はOKなベジタリアンです。

ラクト・ベジタリアン(lacto vegetarian)

ここまで来ると名前から予想できるかもしれませんが、肉・魚介類・卵はNG、乳製品やはちみつはOKなベジタリアンです。

ペスカトリアン(pescetarian)

厳密にはベジタリアンではないそうですが、肉はNG、魚介類はOKな人のことを言います。
寿司も出汁もOK!なのでこのタイプの人には日本食を提供しやすいです。
わたしがデンマークで通っていた学校の、日本大好き!日本フリークな先生も、ペスカトリアンで寿司も大好きでした。

デンマークの魚介類事情についてはこちらの記事をごらんください。

ヴィーガン・ベジタリアンになるさまざまな理由

日本では「菜食」というと、マクロビオティックのイメージの方が強く、「健康」や「ダイエット」のために実践している人が多いと思います。
もちろん海外でも健康のためにベジタリアンになった人もいますが、それ以外にも「環境のため」「宗教上の理由」など、様々な理由で菜食になる人がいるんです。

17歳の少女がヴィーガンになる理由

海外のヴィーガン・ベジタリアン料理

デンマークで通っていた学校では毎食ビュッフェ形式で食事が提供されていましたが、常にベジタリアン向けのメニューが一角に置かれていました。
実はデンマークではこれは普通のこと。デンマークではベジタリアン・ヴィーガンが多いヨーロッパの他の国と比べても菜食主義者が多く、レストランや学校給食にもベジタリアン向けメニューが必ずあります

とはいえ、最初は特に関心はなかったのですが、たまたま同じクラスだったノルウェー人の17歳の女の子が完全菜食主義者のヴィーガンだと知ったのが、興味を持った最初のきっかけです。
先生の家に招かれて食事をふるまってもらった時、彼女の食事だけ乳製品を全く使わない別メニューが提供されました。
畜産業が盛んなデンマークでは多くの食事に乳製品が使われます。乳製品を全く食べない食事スタイルって大変なんじゃ?と疑問に思い
「どうしてヴィーガンになろうと思ったの?」と聞いてみたところ。

環境のことを考えて」という返事が返ってきました。

もしかして両親もヴィーガンで影響されたのかな?と思いましたが、両親は菜食ではなく自分の意志で決めたそう。

日本で自分が高校生の時、環境について主体的に考えたことがあったか?
いや、ないですね…

日本の高校生で環境のためにヴィーガンになるという人がいるのだろうか?
多分いないんじゃないでしょうか…

ということで、二回り近く年下の子が真面目に環境問題について考えているのに何も知らないのも恥ずかしいなと思い、それがきっかけでいろいろ調べるようになりました。

環境問題とヴィーガン・ベジタリアンの関わり

環境と肉食がどう関わるのかをを知らないと、なぜ環境保護=ベジタリアンになるのか理解できないと思います。わたしも最初はそうでした。
ざっくり説明すると、食肉となる家畜を育てる畜産業が、地球規模の環境汚染を引き起こすので、肉食を減らす・もしくは全く食べないことで環境を守るというのが彼らの考え方です。

たとえば、餌になる草木の伐採による森林破壊、牛のゲップから排出される温室効果ガスによる地球温暖化への影響などはよく知られています。
また、世界的に草地が不足しているため、同じ広さの土地で生産される食肉より野菜や穀物などの方が収穫量が多いことなども菜食を支持する理由だそうです。
これらはほんの一部でもっとたくさんの原因があるので、気になる方は調べてみてくださいね。

環境保護や動物愛護を掲げるヴィーガンの思想

動物愛護を唱えるヴィーガン

ご紹介してきたベジタリアンとは違い、動物由来の卵、乳製品、はちみつなどを全く食べない完全菜食主義者をヴィーガンと呼びます。
日本でもよく知られているマクロビオティックを実践している人も食事スタイルはヴィーガンの人が多いですが、ヴィーガンの思想とは異なります。

ヴィーガンの人は動物性食品を食べないのに加えて、毛皮や皮革、羊毛、ダウン、動物実験を用いた化粧品や化学製品まで避けています
これは、ヴィーガンが地球上の動物たちは、人間に食料を与えるために存在するのではない、無駄な殺生を避けるという思想を持っているからです。
ヴィーガンの人にとってははちみつも蜂(動物)由来のもので、蜂が自分たちのために蓄えた蜜を横取りするのは蜂にストレスを与えている、という点で反対されているよう。
ベジタリアンよりヴィーガンの方がより哲学的な思想ですよね。

五葷もNGなオリエンタル・ベジタリアン(Buddhist cuisine)

宗教上の理由でベジタリアンになる人もいます。それが、オリエンタル・ベジタリアン。
厳格な仏教徒で中華系の人にいるのがこのタイプ。台湾や東南アジアの人が主になります。
動物性食品のほか、五葷(ごくん)と呼ばれる香りや刺激の強い野菜(にんにく・にら・らっきょう・ねぎ(たまねぎ)・あさつき)を食べるのを避けます。
乳製品は人によってはOKなこともあるようなので、ヴィーガンとは限らないみたいです。

禁止する理由は哲学的な面が強いため説明が難しいのですが、簡単にいうと「野菜であっても刺激が強すぎるものは修行に向いていない」そうです。
たしかに五葷は消化を助けたり、免疫アップのためによい食材ですが、胃に負担がかかったりするのも事実です。
日本でも精進料理では五葷を食べないとされていますし、そう考えるとなんとなく理解できますね。
マクロビオティックを実践されている方も五葷は食べない方が多いですね。

屠殺現場を見てショックを受けて

上記の理由以外にも、たまたま家畜が殺される場面を見て、それ以来ショックで肉が食べられなくりベジタリアンになった、という人もいました。
わたしは見る勇気がないので見たことありませんが、YouTubeなどでも動画が上がっており、かなり残虐なようですね。。

肉なし月曜日(Meatless Monday)が海外でブーム

オーストラリア人のお客さんが教えてくれたのですが、最近オーストラリアでは月曜日だけ肉を食べない「ミートレス・マンデー(Meatless Monday)」がブームになっているそうです。
環境のために、そして週末に食べ過ぎた分をリセットし健康のために、と背景には複数理由がありますが、実はかなり昔からそのような取り組みはされていたそう。

大きな動きとしては、2009年にイギリスでポール・マッカートニーが始めた「ミート・フリー・マンデー(Meat Free Monday)」というキャンペーンがヨーロッパ諸国に影響を与えたらしく、アメリカ、南米、ヨーロッパ、東欧、アジア、中東、そしてアフリカにまで広がったようです。
日本にいるとなかなかこういう海外の動きを知る機会は少ないですよね。

肉を減らさないとヤバイ?昆虫を食べる日が来るかも…

海外のヴィーガン・ベジタリアン事情

世界的には肉を食べる量を減らすのが今のムーブメント。
最近では近い将来訪れると予想される食料難に備えて昆虫から栄養を摂る研究なども行われています。。
ベジタリアン日本料理のレッスンを受けるお客さんも、完全にヴィーガン・ベジタリアンの人ばかりというわけでなく、なるべく肉を減らしている、肉は食べないけど魚は食べる、という人もいてさまざまです。
ヨーロッパをはじめとする欧米諸国では環境について関心が高く、食事以外にもプラスチックを原料とするパッケージを減らしたり、スーパーのビニール袋が有料だったりと、身近なところで環境のことが考えられています。

わたし自身はベジタリアンではないですし環境問題にすごく関心が高いわけではありませんが、たまに健康のために肉や魚介類抜きの食事にすることもありますし、買い物時はエコバッグを持参するようになりました。
少しの変化ですが、海外に住んだり外国人のお客さんと接することで多少意識も変わったかなと思います。

おわりに

食料廃棄率が世界一と言われている日本。日本の食事は確かに美味しいですが、食に関わる者として少しでも食材を無駄にしないようにしないとな、とも思います。
そして、外国人のヴィーガン・ベジタリアンの友達に日本食を作ってあげるときは、必ず何を食べないか聞いてから作るようにしましょう!
海外で見つけた美味しいベジタリアン料理についても、また別の機会にご紹介したいと思います。