こんにちは、フードコーディネーター・フードスタイリストのsaecoです。
外国人向け料理教室をしているというと、よく聞かれるのが「どんな料理を教えてるの?」という質問。
日本で外国人に教える料理=伝統的な和食、というイメージを持つ人が多いのですが、実は日本人が考える「和食」と外国人が認識している「日本食」は少しズレがあります。
知っていますか?こんなにある海外から来た日本食
わたしたちがイメージする和食といえば、伝統的な京料理のような日本料理か、家庭で食べられている和食だと思いますが、実は海外から来て日本流にアレンジされた料理ってたくさんあるんです。
今日はそんな料理を紹介していきたいと思います。
知名度No1!の寿司
これを語らずして海外では日本食は語れない!日本食=寿司というくらい、海外では圧倒的に寿司のイメージが強いですが、もともと寿司は中国から来たもの。
なれ寿司という酢で〆た魚をご飯に乗せた保存食が、江戸時代にファストフードとして握り寿司になりました。
今でも鯖寿司など酢で〆た魚の寿司は食べられていますが、こちらが原型に近いようです。
ただ、以前も紹介したとおり、日本以外の国ではもはや日本料理とは言えないくらいローカライズされたさまざまな寿司が食べられているのが事実。
海外では握り寿司より巻き寿司がよく食べられていますが、新鮮な魚が手に入らなかったり魚を生食する文化がなく中に具を入れてしまう巻き寿司の方が食べやすかったりと、理由はいろいろあるようです。
また、ファストフードのような安価な寿司から高級レストランの寿司までピンキリで、ランチに寿司を食べるなんて人もいて、わたしたち日本人がサンドイッチを食べる感覚に近いのかなぁと思ったりします。
Nextトレンド!ラーメン
ここ数年、海外で人気が出てきている日本食がラーメン。
日本企業が多数進出しているアジアではもちろん、北米やオーストラリアに、少し遅れてヨーロッパでもどんどん店舗数が増えているようです。
海外ではラーメン一杯で2000円くらいして味もそこそこだったりするので、日本のラーメンの安さ&美味しさにはよく驚かれます。
ラーメンが日本食!?と思う方もいるかもしれませんが、ラーメンも中国から渡ってきて日本人好みに合うようにアレンジされた料理です。
伝わってきた当時、日本人にとって麺類といえばうどんや蕎麦で中国料理の味付けは油っこすぎたため、日本人が慣れ親しんでいる出汁に使う鰹節や昆布などの食材を使うようになったそうです。
海外ゲストにラーメンの起源は中国という話をすると驚かれることが多く、海外ではしっかり日本食としてのイメージが定着していることが伺えます。
焼き餃子
中華料理屋の定番焼き餃子ですが、こちらも中華料理ではなく日本食。
中国にもいろんな種類の餃子があり、材料も似ていますが、調理方法は茹でる、蒸す、揚げるなどシンプルにワンステップ。
焼き餃子の「蒸して焼く」という手法は日本オリジナルで、日本でも本格的な中華料理では提供していないことも多いですね。
英語では、餃子のことをダンプリング(Dumpling)と呼びますが、概念は幅広く、小麦粉やじゃがいも、米などをこねて丸く固めた料理や、餃子のように生地で具材を包んだ料理の総称となります。
日本と中国以外の国でもいろんな作り方のダンプリング料理が存在しますが、焼き餃子はGyozaとしても認知されています。
高級料理の天ぷら
和食の代表格とも思える天ぷらですが、もとは西洋から伝わった料理。
いつどこから伝わったのかはいろんな説がありますが、室町時代にポルトガルから伝わった、という説が今のところ有力なようです。
当時は油が高価で滅多に食べられない高級料理だったそうですが、油が普及すると共に江戸時代に庶民に広まったとされています。
海外では寿司やラーメンくらい知名度は高いのに、意外と食べたことがない外国人が多い天ぷら。
ローカライズされたどこでも食べられる寿司とは違い、天ぷらは高級レストランで食べるもの、というイメージが強いようです。
ちなみに、そんな日本の天ぷら由来の料理がフィリピンにあるとゲストから聞きましたが、その名もテンプラ(Tempra)。
サメのすり身を揚げたフィリピンのストリートフードらしいのですが、日本の天ぷらは高価なので気軽に食べれるように、とフィリピン人が考え出したそう。一度食べてみたいですね。
日本人の国民食カレーライス
インドカレーやタイカレーなど海外には数多くのカレーあれど、日本人の国民食といえばカレーライスでしょう。
インドからイギリスに渡り、さらに日本にやってきたカレー。伝わってきた当時は海軍の栄養食として食べられていたのが、各地に伝わり庶民の味になったそうです。
元祖のインドカレーなんかはシャバシャバしていてスープのような感じですが、日本のカレーの大きな特徴は小麦粉で付けられたとろみと甘みがあるルウ。
寿司やラーメンほどではありませんが海外でも日本のカレーは認知されていて、食べたことがある人は大抵気に入ってくれるので、日本食慣れしていない外国人におすすめの料理でもあります。
不思議なことに、いくつかの国ではカレーライス=カツカレーとして認知されていて、なぜかカツが乗ってないカレーライスまでもが「カツカレー」と呼ばれていたりします。
ハンバーグ
西洋の料理っぽいのに海外で通じないNo1といえばハンバーグではないでしょうか。
海外ではハンバーグという名前の料理は存在せず、Hamburgといえばドイツの都市ハンブルグという意味になります。
ハンブルグで食べられていたタルタルステーキがアメリカに渡り、ハンバーグステーキ(ハンブルグ風ステーキ)と呼ばれるようになり、日本のハンバーグの原型となったそうです。
しかし、今はハンバーグステーキという名前は英語圏では通じないそうです。
ハンバーガーに挟んでいるものはパティと呼ばれますし、それ単体で食べられることはないよう。
パティは牛肉100%のことが多く、日本のハンバーグによく使われる合挽き肉のように複数の種類の肉を混ぜるのもあまり一般的ではないようです。
コロッケ
コロッケはクロケット(croquette)というフランス料理が原型ですが、日本で一般的なじゃがいもを使ったコロッケではなくクリームコロッケに近いそうです。
また、日本のコロッケと違い、粒の細かいパン粉をまぶしてオーブンで加熱する料理でした。
昔の日本人は乳製品にあまり馴染みがなく、たくさん摂るとお腹を下したりする人も多かったため、当時欠乏しがちだったビタミンB1がたくさん摂れるじゃがいもが使われるようになったとか。
実はわたしもあまりたくさん乳製品が食べられず、昔ながらの本格的なフレンチなどで食事すると胃腸の具合が悪くなることがあります。(最近のフレンチは軽めのものがトレンドですが)
海外の食品をよく食べるようになった今でも、欧米諸国に比べると日本で手に入る乳製品の種類は少ないですが、日本人の食文化や体質にあまり馴染まなかったと知ると、納得。
ちなみに日本在住のフランス語圏ベルギー人の友人が、ベルギー料理で恋しいのはクロケット(フランスとフランス語圏のベルギーは似た料理が多いそうです)というので、日本のコロッケはクロケット由来と伝えると驚いていました。
おわりに
今日ご紹介したのは代表的な料理ですが、他にも海外由来で日本でアレンジされた料理はたくさんあります。
同様に日本の料理が海外で現地の食文化や好みに合わせて変わるのも、当たり前のことなのかもしれません。
日本人も歴史的に海外の料理を自分たち好みの味にアレンジし続けてきているので、一概に海外の日本食は日本食じゃない!とも言い切れないかもしれませんね。